同人誌とは?
考え方や主義志向、趣味などが同じ人たちが集まることを「同人」と呼びます。それらの同人が共同で執筆、編集、発行する機関誌や雑誌を「同人誌」となります。
「同人誌」の歴史は明治時代にまでさかのぼります。小説家の尾崎紅葉などが中心となった文学結社である「硯友社(けんゆうしゃ)」で文芸作品などを自費で出版した「我楽多文庫(がらくたぶんこ)」が日本で初めての同人誌といわれています。この「我楽多文庫」での活動が後の文学界に大きな影響を与えたといわれています。
個人誌
個人誌とは1人の作者(主に同人作家や同人漫画家)により作成された同人誌を指します。現在の同人誌で主流の発行形式です。
個人誌のメリットは個人の資金の許す限り納得のいくまで冊子の体裁を整えたり、ストーリー展開や表現の追求ができることです。
個人誌が主流になった要因としては、冊子の制作費用が以前に比べて安価になり、数人で出資する必要性がなくなったこと、作品発表の場がインターネット上に広がったことなどで容易に読者に作品をアピールできるようになったことなどがあります。
合同誌
合同誌とは、特定のジャンルの元に複数の作者が集まり、各々が発刊費用を出資して作る同人誌を指します。
それぞれ独立したサークルとして活動している複数人の作者で作られた場合や、同一のサークルに所属する複数人の作品が掲載されている場合なども合同誌といいます。その点は、商業誌の「アンソロジー」と類似しています。
ファンジン
ファンジン(fanzine)とは「fan(ファン)+magazine(雑誌)」からなる造語で、ファンが集まって評論・創作などを掲載する雑誌を指します。
SF関係の雑誌を指すことが多いですが、それは、同人誌の発祥がSF関係であり、かつては同人誌をファンジンと呼んでいたからだという説もあります。
漫画とは?
情報やストーリーを文章ではなく絵で表現したものです。単純、軽妙な筆致の絵で、滑稽、風刺、ナンセンスなどを主に表します。
日本最古の漫画とされているのは、平安時代から鎌倉時代に描かれたとされている「鳥獣戯画」です。
現在ではコマ割りなどで連続させた絵に吹き出しで台詞(せりふ)や、ト書きを入れて物語性を持たせているのが特徴です。
同人誌と漫画の違い
同人誌の最大のメリットは、漫画(誌)よりも自由な表現を発表できる冊子という点です。
同人誌には、小説のような読み物の文芸系、一次創作系、既存のマンガ・アニメ・ゲームなどを題材とした二次創作系、その他にもコスプレ写真集や特定の趣味を深く追究した専門雑誌のような作品など様々なジャンルがあり、出版社の介入を受けないために自由な表現を発表できる場となっています。
同人誌のデメリットとしては、多くが同人や個人の自費出版の形態を取っているため、出版社などの商業出版を通さない流通経路で発刊しています。そのため、発刊の費用はすべて同人や個人で負担しなければいけません。
一方で、漫画のメリットは、同人誌に比べて発刊の費用負担が少ないことです。
漫画(誌)は出版社を通して発刊する「商業誌」という分類になります。
そのため、作者は漫画を発刊するための製作費や広告宣伝、書店への流通経費などの一切の商業出版の経費を負担せずに済みます。
しかし、発刊した漫画の販売や重版などの権利は、出版社が所有することになりますし、アイデアや企画、編集などが出版社の意向に添うように求められることもあり、この点はデメリットとなります。
同人誌に出版社は必要?
同人誌の場合は、原稿作成から印刷所への依頼は個人で行います。費用も個人で負担します。
また、前述したように同人誌は出版社が介在しないので、全国の書店やネット書店の流通ルートには乗りません。そのため、同人誌は個人で一定の数を制作し、イベントに出向き個人で販売します。当然費用は安く抑えられますが、たくさんの人に読んでもらうことは困難です。
全国に流通させたい場合は、著者自身が出版に関する制作費用を負担して、出版社に発行を依頼する「自費出版」という方法を取ることもできます。
自費出版の場合は、同人誌よりも費用はかかりますが、全国の書店やネット書店で販売されるため、多くの人の目に留めてもらえる可能性が広がるのが大きな魅力と言えます。
漫画に関しても前述したように出版社を通す他に、自費出版や同人誌として発行する方法がありますが、多くの人に読まれやすいルートは確保しづらくなります。
それぞれの目的に合わせて発行形態を選ぶとよいでしょう。
同人誌の流通経路
同人誌の販売ルートは、「コミックマーケット」(コミケ)とよばれる同人誌即売会、同人誌を扱う書店での委託販売、インターネットダウンロード販売、インターネットオークション、同人サークルから個人への直売などが主なものです。
近年、非常に人気のある同人誌即売会は、日本で独自に発展してきたものですが、漫画、アニメ、ゲームといった日本の表現作品が世界からも注目されるようになったひとつの要因であるともいわれています。
同人誌の作り方の手順
原稿の作り方には、パソコンで作成する「デジタル原稿」と手作業で作成する「アナログ原稿」の2種類があります。
最近では、インターネットやデジタル端末の発展に伴い、デジタル原稿での作成・入稿が主流となっています。
アナログ原稿を入稿する場合には、印刷会社に原稿を郵送したり持ち込む必要があります。アナログ原稿に対応していない印刷会社もありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
原稿が完成し、冊子の形に仕上げる際には、2種類の製本方法が主流です。
・中綴じ:用紙を重ねて真ん中でホッチキスで綴じて二つ折りにする製本方法
・無線綴じ:用紙の背を糊で綴じて表紙で包む製本方法
一般的には、ページ数の少ない同人誌には「中綴じ」、漫画などページ数の多い同人誌は「無線綴じ」が使われます。
同人誌即売会への申し込み手順
同人誌即売会に申し込みたい場合は、まず参加したい同人誌即売会をインターネットで探します。
自分の希望する同人誌即売会が見つかったら、公式サイトにアクセスして申込みましょう。申込書を郵送するかオンラインでの申請書提出が一般的で、多くのイベントでは参加費がかかります。
申請には2〜3ヶ月程度かかり、大規模なコミケとなれば半年前から申込みが行われるイベントもあります。参加は抽選となっているイベントも多いため、早めに申込書を準備し手続きを行うようにするとよいでしょう。
同人誌を描く際のツールや入稿の注意点
パソコンで原稿を作る際は、ClipStudioやSAIなどのペイント系ソフトやPhotoshopなどの画像編集ソフトを使うのが一般的です。
反転やベタ塗りなどが簡単に行えて、印刷会社への入稿もデータを送るだけで済みます。PC上にペンで絵を描けるペンタブレットも併せて使うと便利です。
データ入稿の際には、以下の点を確認しておきましょう。
・サイズ、解像度:作りたい冊子の仕様と合っているか
・保存形式:依頼する印刷会社が対応できる形式になっているか
・各ページデータに、仕上がり位置を示す「トンボ」が付いているか。
同人誌の製本を考慮した背幅の計算
同人誌を無線綴じで製本する場合には、背表紙ができる仕様になるため、背表紙の幅(背幅)にも注意しないといけません。
表紙データは、表紙+背表紙+裏表紙をレイアウトしたデータで作成しましょう。
背幅は以下の計算式で算出できます。
背幅(mm)=(表紙用紙の厚さ×2)+(本文用紙の厚さ×本分のページ数÷2)
同人誌を印刷するおすすめの印刷会社の選び方
同人誌の印刷会社を選ぶ際の選定ポイントは「作りたい仕様」「納期」「価格」「入稿形式」です。
オプションやサイズにこだわる場合は「仕様」、〆切をできるだけ遅くしたい場合は「納期」、リーズナブルに作りたい場合は「価格」、アナログ原稿で作成する場合は「入稿形式」というように、自身の重視する点に合わせて選ぶとよいでしょう。
印刷会社によって価格やオプションなど強みは様々です。サンプル請求したり、対応できる仕様を問合せてみるのもおすすめです。
早めに印刷所を選んでおくと、入稿などスムーズに進められます。
同人誌の製本方法
製本には、上製本と並製本の2種類があります。冊子の目的に合わせて選びます。
1.上製本
上製本は、ハードカバーとも呼ばれ、厚紙の硬い表紙が特徴です。
書店に並んでいる小説の単行本や絵本などに使われています。高級感があり耐久性が高まりますがコストも納期もかかります。
2.並製本
並製本は、ソフトカバーとも呼ばれ、表紙を柔らかい用紙で本文と綴じたシンプルな作りが特徴です。
作りがシンプルなため、上製本に比べてコストと納期が抑えられます。同人誌を始め、文庫本や雑誌、ムックなど、多くの書籍がこの製本方法です。
同人誌の綴じ方
同人誌でよく使用されるのは無線綴じです。特に、ページ数が多めになる漫画はほとんど無線綴じが使われます。
ただし、ページの少ない冊子の場合は中綴じがおすすめです。 少部数の場合は大きな差異は出ませんが、無線綴じより中綴じの方がコストが抑えられます。
プリントモールの同人誌印刷の事例を紹介
ネット印刷プリントモールでも様々な同人誌の印刷実績があります。特にページ数が40ページ以上の無線綴じ冊子でのご注文が人気です。
漫画
同人誌サークル様より、イベント用の冊子印刷を依頼いただき、お客様のご要望を聞いた上で、担当者より提案させていただきました。「オンデマンド印刷とは思えない仕上がりで、丁寧に作ってくださったことがわかり感激しました」とのお声をいただいております。
自分史
ご自身の起業から現在までの歴史を本にまとめた自分史を依頼いただきました。初めてのご利用でしたが、品質にもご満足いただき、データ入稿時の担当者の対応にも大変助かったと評価いただきました。
随筆
自身の旅行記をまとめた随筆集です。イベントギリギリでの申込みとのことでしたが、納期対応・出来上がり共にご満足いただきました。
まとめ
同人誌即売会に出品すれば、自分の制作した同人誌を、様々な人が目に留めたり手に取ってくれます。
自分の同人誌を誰かが気に入ってくれれば、作り手としてこれ以上の喜びはありません。
同人誌のイベントにも積極的に参加してみましょう。
同人誌は出版社を通さずに個人やサークルで創作をおこないますが、同人誌を製本する際には印刷会社に依頼することをおすすめします。
漫画などページ数の多い同人誌では無線綴じでの製本が適しており、自分の希望に沿った冊子に制作してくれる印刷所を探してみましょう。