オンライン授業とは
「オンライン授業」とは、その名の通りインターネット回線を通して遠隔で行う、時間や場所に囚われない教育手段のことです。米国のハーバード大学といった海外の有名な教育機関が先進的に取り入れ始め、近年では日本でも教育現場や企業研修などで導入されるようになってきました。
実際に予備校、一部の企業などをはじめとして講義をLIVE配信し、講師と受講者がインタラクティブにコミュニケーションを行うスタイルの授業も増えています。録画をして後から受講者が動画を視聴することもできるため、見逃してしまった授業でも好きなだけ見返せることが特徴です。
また、インターネット回線さえあればどこからでもオンライン授業は受けられるため、たとえ授業が行われている拠点から離れた場所に住んでいたとしても、自分のペースで専門講師による質の高い授業を受けることができます。
オンライン授業が注目される理由とは
それでは、なぜオンライン授業は現在注目されているのでしょうか? まず、学校や家庭におけるパソコンやタブレット端末の普及率の高まりによって「生涯学習」が当たり前の時代になっていることが挙げられるでしょう。なお、生涯学習とは、学校教育だけでなく企業内や趣味などにおける、自身の勉強全てを指します。
さらに、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、オンライン授業を導入する学校は急増しました。外出が制限される中でも授業を行えるオンライン授業は、教育を続けるために遠隔授業の一環として全国的に広まっています。
実際に、株式会社旺文社が「旺文社 高大コネクトサービス」会員の全国の高等学校教員1,330名を対象に2020年5月に実施したアンケートによると、「休校後に実施」が51.1%、「今後実施予定」が21.1%と、新型コロナウイルス拡大予防のために、約7割も導入率が急増しています。
インターネットへの接続環境とPCやタブレット端末があれば、場所を選ばずに自宅でも授業配信やチャット・課題提出を行うことが可能なオンライン授業は、感染症拡大の予防や、緊急の際に教育を続けるための大きな役割を果たしていると言えるでしょう。
また、オンライン授業は小中高校、大学、社会人向けのレカレント教育と幅広い教育シーンで行われています。また、緊急事態宣言の解除以降、小中高校の授業は再開される一方、大学では再開されないところも多くなっています。すでに秋以降からも、全面的に、あるいは一部の授業を除いてオンライン授業を行うという決定をした大学もあります。オンライン授業のポテンシャルは今後さらに拡大されていくでしょう。
意外と知らない?オンライン授業の種類とは
オンライン授業の形式は、厳密には「録画」と「LIVE配信(生放送)」の2つに分けることができます。
ただ、どちらを使うべきなのかは状況や目的によって異なってくるため、自社にオンライン授業を使う場合は、どちらがよりその時々に対して効果的なのかを吟味することが必要です。
以下ではこの録画とLIVE配信について表にまとめて説明していきます。
録画 | LIVE配信 | |
録画した映像をインターネットで一方向に配信 | 形態 | ネット回線や衛星回線を使ってLIVE配信するオンライン授業 |
・自分のペースで好きな時間に学習できる
・動画の巻き戻しを使って分からない部分を繰り返し視聴できる |
主なメリット | ・動画でお互いの顔を確認でき、同じ空間の共有ができる
・チャットボックスを通しての質疑応答や資料の画面共有機能で、効率よく学習できる ・大人数で同時にオンライン授業を行うことができる |
・大人数で同時にオンライン授業を行うことができる
・リアルタイムで双方向のコミュニケーションができないことから、分からない部分は講師側に質問できない ・成績を評価しようとした場合、誰の監視下にも置かれていないために受講者の集中力が散漫になってしまう可能性がある |
デメリット | ・授業進行のスムーズさが参加者全員の通信環境に左右される |
・塾や予備校の授業、企業の社員教育用e-ラーニングシステム
・出席をとる必要のない大学の授業や、大人数での授業に向いている。また、時間や場所に制限なくいつでも視聴できるため、リアルタイムの授業には参加できない社会人への授業にぴったり。 |
主な活用例 | ・オンライン英会話、コミュニケーションをとりながら行う授業、生放送
・小・中学校など進捗状況を確認しながら進める必要のある授業 ・リアルタイムに生徒とコミュニケーションを取る方法には、チャットやビデオで直接会話をする方法がある。 |
▼通信教育とはどう違うの? 遠隔授業の一つに「通信教育」があります。通信教育では、教材はテキストのみで提供されることが主流でした。一方でオンライン授業は、動画でコンテンツが配信されます。テキストと比較し動画を通じすることにより、人間の脳は、6万倍以上速度でその情報を処理する(英語ページ)ことができるといわれており、その優位性は歴然とした差です。
オンライン授業を導入する7つのメリット
録画版とLIVE配信版の双方の違いを見たところで、オンライン授業そのものには具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
オンライン授業は、ユーザー個人にとっても企業にとっても、さまざまなメリットをもたらします
ユーザー側
1.トップクラスの講師の授業を受けられる
オンライン教育の大きなメリットは、一流の講師の授業を多くの人が受けることができることにあります。
オンライン授業が普及すれば、地方に住んでいる学生や、時間を多く取れない社会人が交通費や移動時間をかけることなく、トップクラスの授業を受けられるようになります。これにより、大学受験・資格試験などでのハンデがなくなります。ビジネスや趣味の分野も同じです。地域による教育格差が小さくなります。
同時通訳や翻訳テキストなどで言語の壁さえなくなれば、他国の学校や教育機関、企業の配信する教育的なオンライン授業を視聴することさえも可能です。
特に、Live配信であればチャットで気軽に質問したり、講師やほかの生徒と意見交換したりすることも可能です。
また、オンデマンド配信であれば、隙間時間に視聴することができるため、時間に縛られずに自由なタイミングで学習を進めることができます。
2.時間やコストを節約できる
オンライン授業の場合、学校や会社に行く必要がないため、通勤・通学にかかる時間と費用が削減できます。これはオンラインの大きな特徴といえます。
3.自分のペースで授業を進めることができ、わからないところは繰り返し視聴できる
オンライン授業の中でも、録画配信であるオンデマンド授業であれば、自分のペースで授業を進めることができます。一時停止や巻き戻しなども自由にできます。
そのため、分からないところは繰り返し視聴し、理解を深めていくことができます。これはライブ配信のオンライン授業では実現が難しいですが、オンデマンド授業なら可能です。
配信側
配信側のメリットは次の4つです。
1.時間やコストを削減できる
オンライン授業には、教室が必要ありません。授業を提供する側も大規模な教室を用意する必要はなく、コストがあまりかからないというメリットがあります。
近年のノートパソコンには、ほとんど内蔵カメラやマイクが搭載されています。そのため、初期投資としてマイクやカメラを別途購入する必要もなく、オンライン授業のコースを配信している教育機関などはYouTubeなどを通じて無料の動画を配信している場合がほとんどです。
これらの条件を活用することにより、授業に通うことなく、無料でお試しの動画を視聴し、パソコンさえあれば追加費用さえもほとんどかからないことになります。
2.離島や過疎地の学校教育に貢献できる
日本は人口減少が進んでおり、地方や離島の学校はこれから存続が難しくなることが危惧されています。
文部科学省は、2017年に離島や山間部などの小規模公立小中学校にテレビ会議システムを導入し、近くの学校と一緒に授業ができるようにする計画を固めています。テレビ会議システム・Web会議システムなどを活用すれば、過疎地に住んでいる生徒にもオンラインで充実した授業が提供できます。
テレビ会議システム・Web会議システムをさらに詳しく知りたい方へ
テレビ会議・Web会議システムについての詳しい説明は、関連記事「テレビ会議システムとは?今さら聞けない仕組みや注意点を徹底解説」「Web会議システムとは?今さら聞けない仕組みや注意点を徹底解説」をご覧ください。
3.会社の研修にも活用できる
オンライン授業は企業研修にも効果的です。一般的な研修の場合では、大勢の受講者たちを一箇所に集める必要があり、さらに会場の準備も業務の時間を割きながら行わなければなりません。
しかし、仕事には急な用事や顧客対応がつきもの。個々人のさまざまな事情により、決められた日程の研修に参加できなくなってしまう社員も少なくないはずです。
そうなると、欠席者には研修・講義内容が直接伝わらず、疑問点などが残れば指導がスムーズにいかない場合があります。また、会場とは離れたところで働く遠方の社員にとってはどうしても交通の面で負担が大きいため、時間や場所の制約が発生してしまうでしょう。
そういった問題を防ぐために、Web会議システムやテレビ会議システムを利用してLIVE配信をしたり、あるいは講義の録画を残しておいたりすれば、「研修を受けることができなかった」という人にも安心です。研修に来られずに欠席した人には録画版を見てもらうことで、自分に都合の良いタイミングで授業を受けられます。
4.予期せぬ災害時にも、授業を継続して行えるようになる
2020年に入り、コロナウイルスの世界的な蔓延が非常に深刻な問題となっています。冒頭でも触れましたが、ウイルスの発生源で極力外出を控えている中国では、さまざまな都市の小中学校において休校を決定しました。その代わりとして、生徒が自宅でも学習できるように全ての授業をオンラインで実施しているのです。
このように、今回のような災害、あるいは緊急時にもオンライン授業は有用だといえます。学校やオフィスが閉鎖した場合、通信環境さえ整っていればどこからでも研修や学習を行えるのです。
オンライン授業の主な利用目的と活用事例6選
それでは、オンライン授業がどのようなケースに導入されているのか見てみましょう。代表的な例としては、以下の活用方法が挙げられます。
- 学校教育
- 学習塾や予備校
- 大学・大学院のサテライト校
- 社内研修
- 社会人学習(リカレント教育)
- オンライン上での習い事(オンラインジム・ヨガ・サークル等)
学校教育
オンライン授業の普及にあたり大きな可能性を秘めているのが、学校教育です。
感染拡大対策のために行われた緊急事態宣言の際には、多くの学校が休校を余技なくされました。一方で子供たちへの教育をとめることもできません。
そんな時、オンライン授業では自宅からでも先生の授業を受けることができます。また、双方向のコミュニケーションが行えることにより、教室のように先生や同級生と会話して孤立を解消することもできるでしょう。
さらに、文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革」を進めていることもあり、昨今は公立・私立を問わずオンライン英会話を授業に導入する学校が増えています。学校教育の分野では、英語教育を皮切りに、オンライン授業が普及していくと推測できるでしょう。
▼具体的な事例は文部科学省が5月にまとめた「小中高等学校におけるICTを活用した学習の取組事例において」を参考にしてください。
学習塾や予備校
学習塾・予備校業界では、すでに多くの校舎が録画型やLIVE型のオンライン授業を提供しています。
例えば、東進ハイスクールは、一部を除いて通信衛星やインターネット回線を利用したオンライン授業(録画版)を行ってきました。オンラインによる授業を実施した先駆者でもある同校は、東大をはじめとする難関大学への合格実績がずば抜けており、オンライン授業の効果を日本全国に広めたといえます。
通信環境が今後さらに改善することで、ますますオンライン授業が普及していくと予測できるでしょう。